毎年訪れている東京藝術大学の卒業制作展。今年も気になった作品達をご紹介いたします。勝手な解釈など付け加えておりますが、作者のみなさま、制作意図と著しく違っていたらご指摘くださいませ。
ではどうぞ…
仁王像が笑顔を見せながら赤ちゃんを抱くのは、三好桃加さんによる「オフの日」。古来から存在するパブリックドメインなキャラクターが、現代的な生活感、ここでは「イクメン」を表現する構造となっている。
これはauの三太郎シリーズと同じ構造と言えよう。
誰もが共感するシーンを、強面の「あの人」が意外なカタチで、しかも超絶レベルのクラフトレベルで演じると、「意外な表現法に驚くけど、描いていることが分かるし、新鮮→面白い」となる。
素晴らしいエンタテインメント彫刻と言えよう。
森山亜紀さんの「X Dress : Mirror」も、よく知られているリカちゃんやバービーの世界観を引用している。でもここで描かれているのは、「嫉妬」など人間が普段隠している感情だ。
生々しい感情をリアルでない人形が演じ、それを油彩で、フォトリアリスティクに描くという多重性が面白い。
前述の仁王像と同じくクラフトのレベルが超絶で、高い技術力で繰り出されるパンチにクリティカルヒットを食らう感覚が気持ちいい。
森山さんの技術の強度を見よ!
一枚ウチに欲しい…
小野海さんの「prism-七彩山」は、CGを3Dプリントしたかのようなキノコ状の形態と虹色が特徴的。
空間に存在する物体として強い違和感を放っているが、近づいてみると優しさと柔らかさを感じる。というのも表面は塗装ではなく、毛糸が隙間なく貼られているのだ。
形態と表面処理、二重のオリジナリティが素晴しい。
この大作を置く場所はウチにはないが、小さい作品なら、欲しい…!
同じ小野さんによるドローイング。作風が一貫している。
20代で作風が一貫しているというのは、作家性の強度の高さを表している。普通ここまでは達しないものです。
以下はその他、気になった作品を列挙する。
これは永久階段である。
ひたすら登れるし、永遠に降りることもできる。
その他、院生、学部生の皆さんによる作品達。
今年も眼福でした。