さてホラ勉第二弾は「キラーコンドーム」。1996年制作。ずっと気になってたこの映画。周りの評判も良かったし、ジェリー•ビーン氏による広報ビジュアルのキッチュな印象も強烈だった。
結論から言うとなかなか気に入った。B級に徹しつつもエンタテインメントとして成立している。最初はH.R.ギーガーデザインの人喰いコンドームがグニャグニャと都市を徘徊するだけのストーリーかと予想してたけど実際は全然違って、孤独な男が愛を手に入れるというけっこう真面目な話だった。しかも主人公のルイージ刑事は「女の尻よりも男の固いケツがいい」なんてリアルなセリフを語るゲイだった。男が男を求める純愛映画。これはかなり予測外。ルイージは小柄で中年で頭髪は薄いけどペニスの長さは32センチという設定。映画の全編に渡って彼の「チンポ」「キンタマ」ていう直接的なコトバが飛び交うのが小気味よい。
舞台は娼婦や男娼が客と変態プレイを重ねるNYの連れ込みホテル。客室に備え付けの無料コンドームが事件を引き起こす。主人公もキンタマを一つ食いちぎられる。復讐に燃える彼はなぜかシシリア出身でしつこい性格。おとり捜査にかり出されるノーマルの同僚は無理矢理ハードゲイクラブに潜入させられ貞操の危機に直面する。元警官でルイージにかなわぬ思慕を寄せる女装歌手で男娼のボブは本名で呼ばれると烈火の如く怒り「バベットよ!」と声を荒立てる。捜査を進めるうちにマッドサイエンティストと狂信的な教条主義者の姿が見えて来るのだがそこはあまり重要ではなく、監督の目線は、不器用ながらも懸命に生きている変態達のキャラクターの方に向けられている。そう、この映画、ホラー映画というのは仮の姿で、その実は「変態の世界でしか生きられない人々」と「生殖行為以外の性行為を撲滅すべきと考える人」との戦いの話なのだ。ラストについては言及しないが、全体的にいい意味で裏切られた映画であった。同性愛的にエロスなシーンもあるし、笑える箇所もある。B級らしく、ホームパーティーなどで友人と酔っぱらいながら見るぐらいの距離感がちょうどいいか。
不思議だったのは全編ドイツ語というところ。NYの警察も変態も記者達も、アメリカ大統領の演説まで全てドイツ語だった。というのはこの映画、実はドイツ映画なのだ。「ラスト•エンペラー」や「SAYURI」を例に出すまでもなくアメリカが制作した映画は世界のどこを舞台としようがセリフが英語になるのは通例で、わたくしはそれを米国的植民地政策映画と思っていたのだが、日本と同様に敗戦国のドイツ人も同じような事をしているとは知らなんだ。日本で言えば宝塚の配役のままフランスロケで「ベルサイユの薔薇」を映画にしたようなモノか。とにかく、セリフの言語が現地の言葉と違うことを気にしないという点において、欧米人の考えている事はさっぱりわからん。さてここで皆様におねがい…この映画がアメリカでウケたかどうか知ってる人は是非教えてください。
この映画はB級映画を愛するあなたにお勧めです。大作好きと生真面目な人とキリスト教原理主義者の皆様にはお勧めしません。次回のホラ勉は「キラー•アイ」です。
日本向け広報イラスト(画像参照)を描いたジェリー•ビーンさんのサイトはこちら。
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バカですね
うまくまとまった楽しいB級娯楽作
ついにヤツらが牙を剥く