21_21DESIGN SIGHTで開催中の㊙︎展に行ってきた。http://www.2121designsight.jp/
「そのデザインの過程において生み出してきたスケッチ、図面、模型の数々。それらは、多くの人々の目に触れる完成品に比べて、あまり光が当てられません。しかし、そんな「秘められた部分」にこそ、デザインの大切なエッセンスが刻まれています。それらを間近で目にすることは、刺激と示唆にあふれた体験になることでしょう。(パンフより)」
プロのデザイナーによるデザイン作業の実際の痕跡が見られるのは滅多にない事だ。しかもSNSからは絶賛の声が続々と聞こえてくる。これは行かねばならぬ、ということで訪問。
その展示物の中で気になったもの、企画作業の参考になりそうなもの。たまたま持って行ったiPad ProとApple Pencilでこれらをスケッチし続け、ふと気がつくと4時間が経過していた。
この展覧会は一部を除いて写真撮影が可能。これにより多くの鑑賞者が写真をバシバシ撮りまくっていた。
しかし僕の場合こういった写真を後で見返すことはあまりない。メモの方が後から見やすく、感想も逐一追加できる。
ただ、やたらと時間を消費する。
「しっかし、普通立ったまま4時間もスケッチするか? キミ大丈夫か!? 」
「はい、スケッチしている間はずっと夢中で、滅茶苦茶楽しい時間だったので、時間の経過に全く気づきませんでした。 」
「あっそう、でもさすがに、言ったら悪いけど、ちょっと、変じゃない?? 」
「はい、そんな人は、他には見かけませんでしたね。 」
ということで、僕が現場で書いたスケッチとそこから得られた気付きを、ほとんど自分のためだけに記録します。
2020年3月8日まで開催しているので、気になった人はぜひ訪問を。
ガリお勧めです。
永井一正氏 グラフィックデザイナー
ポスター原画の数々を展示。0.1mmのロットリングで書かれたであろう細い線が敷き詰められた原画も。色鉛筆やペンで描かれた手書きの線は、ポスターとして大きく引き伸ばされた時、魔術のような力を発し始める。
松永真氏 グラフィックデザイナー
1年分が2冊となっているオリジナルの日記帳の厚さと情報量。広島アピールズポスターの原画はデカルコマニーで、偶然から生まれた模様の中からストーリーを感じさせるものを選択。これも原画は小さい。フランスの煙草GITANESデザインコンペの決勝戦は11回。
黒川雅之氏 建築家/プロダクトデザイナー
吟醸酒グラス「ムラノグラス」。ベネチアのムラーノ島に伝わる高度な職人技で制作していたグラスを中国で生産してみると価格が1/10になったとか。
田中俊行氏 空間デザイナー
88台のプロジェクターを使った映像の絵コンテに注目。スクリーンに合わせて分割された枠にコンテ絵を描いている。複数かつ形の違うモニタでの映像展開を考える時に役立ちそう。コンセプト図の構成も抽象的な概念を図式化する参考になる。
喜多俊之氏 プロダクトデザイナー
25歳の時にデザインされた名作家具「SARUYAMA(猿山)」はソファの図面がけっこう適当。図面からの発想ではなく立体物でエスキスモデルを作りながら思考したに違いない。
伊藤隆道氏 造形家
様々なスケールの人間の写真をフィギュアのように立たせて彫刻のサイズ感を確認している。シンプルなアルミ棒の曲線が数メートルの大きさに見えてくる。建築模型を見ることはよくあるが彫刻家が作る模型を見ることはまず無い。新鮮。
柏木博氏 デザイン評論家
詳細な読書メモの数々を公開。後で構成を考える助けになるのだろう。読書しながらアナログでメモ、一度試してみたい。
面出薫氏 照明デザイナー
照明プランを色鉛筆で考えるという単純な手法にプロの技を見る。鉛筆の色で色温度を表現。草津温泉郷西の河原露天風呂計画ではその道程と照明プランを章立てた物語としてシナリオ化している。
内藤廣氏 建築家
リゾームとツリーの図示。建築家による抽象的な権力構造の立体的な理解。コミュニケーション・プランニングの概念図に使えそう。
北川原温氏 建築家
建築のコンセプトを説明するための立体オブジェの迫力。上の3つは全て違うオプジェ。周りを囲むアクリル板にはイタリア語の詞をプリント。プレゼン用に作られたものにしては鬼気迫るオーバークォリティ。80年代の勢いを感じる。
原研哉氏 グラフィックデザイナー
今回一番衝撃を受けたのがコレ。「HOUSE VISION 2/2016東京展」のためのスケッチ。大規模な展覧会のストーリーをエディトリアルデザインというスタイルで詳細に構築。来場者が体験する物語が丁寧にページ化されている。そのままカタログになったのではなかろうか。
隈研吾氏 建築家
高輪ゲートウェイ駅大屋根のスタディ群。デザインは記録せず、その決定プロセスを図示化してみた。あらゆる可能性の中から案を絞り込み、ディテールを極限まで詰めていく道のり。
山中俊治氏 デザインエンジニア
絵が上手な山中氏もタイヤは楕円定規を使っていた。シドミード氏もタイヤは楕円定規で描く。皆タイヤは苦手なんだな。スケッチを万年筆で描いていたのには驚いた。
佐藤卓氏 グラフィックデザイナー
ロゴのスケッチに決まったサイズの用紙を使う。一覧性を高めるためか紙はハガキよりも小さい。ここに細く尖らせた鉛筆あるいは0.3mmのシャープペンシルでデザインを書き進めていく。一つ一つのスケッチが驚くほど小さい!専用の紙入れが可愛い。
田川欣哉氏 デザインエンジニア
マル秘展の企画書が公開されていた。整理されたレイアウトが美しい。
鈴木康広氏 アーティスト
記憶をめぐるノートが300冊並ぶ様は壮観。ノートにナンバリングはされておらず、ランダムに書き加えられるらしい。自らの製作プロセスの中に偶然性を呼び込むスタイル。
㊙︎展は、アイデアを考えたり、何かを作るような仕事をしてる人はぜひ行ってみるといい。その人なりの発見があるはず。ただし時間は余裕を持って行くこと。僕も再訪問しようと思う。今度は3時間ぐらい見ておくかな…
しかしiPadにメモするのはいい。散逸しないし。
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