【CMストーリー】
刑務所の面会室で娘が母親の面会に来ている。いたわりの表情を浮かべながら、娘が言う。「きっともうすぐ出られるわ」「そのうちにね…もう戻るわ」しかしあきらめきった悲痛な表情の母親は、刑務所での作業に戻ろうとする、
カメラが引くと、実はそこは刑務所ではなく家の風呂だった。母親は囚人ではなく、単に落ちない風呂の汚れといつまでも格闘しているだけであった。「愛してるママ!」「私もよ!」今日も悲痛な叫びが風呂場にこだまする。
コピー「掃除の時間を節約しましょう ひどい汚れも簡単に落ちる ヴィム漂白剤」
【CMアイデアカテゴリーと解説】
置き換える+隠す+裏切る
すっごくオーソドックスな構造のCMですが、いつまでも風呂掃除から戻ってこれない母親を刑務所の囚人のように見せた所がアイデアです。CMで刑務所イメージを流用するというのも大胆。さらにストーリーがわかりやすい。キャスティングもすばらしい。音楽もすごく効果的。
広告アプローチとしてはけっこう古典的なので、2004年のカンヌ金賞ってのは、ちょっと、「え?」っていう印象なのですが… なんとグランプリ候補の3本のうちの一本だったそうですよ!(ちなみにグランプリはこちら)想像するに、「愛してるママ!」「私もよ!」あたりのくだりのダメ押しのバカバカしさが、審査員の背中をポンっと押したのではないでしょうか。
【アイデアから表現まで】
アドアイデアは
『ヴィム漂白剤がないと、風呂掃除がなかなか終わらない。』
だと予測します。
アドアイデアから表現への流れを追ってみると…
1:ヴィム漂白剤は、手早く風呂の汚れをキレイにする。
↓
2:ヴィム漂白剤がないと、風呂掃除がなかなか終わらず、
↓
3:気が遠くなるような時間がかかる。
↓
4:それはまるで刑期を勤め上げるようなものである。「置き換え」
↓
5:娘だって悲しがって、早く帰ってきて!と願うに違いない。
という発想の順番になりますね。この流れを、カメラワークでオチを「隠し」ながら逆に見せていき、最後に「裏切る」とこのCMが完成します。しかも、裏切った後までダメ押しのやりとりを見せてる。一言で言うとしつこい!何をこのCMから学ぶって、しつこいって大事だなぁ、という事実ですね。ほとんど人生のTipsのような。はい。このしつこさがカンヌの審査員を頷かせたのではないでしょうか。
“PRISON VISITOR”
client : Unilever, VIM BLEACH
agency :ZiG Inc.
country :Canada
year :2003 ?
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説教臭さゼロの刑務所本
あまりに見事な日常のディテールの描写
ムショ暮らしを垣間見た気分