最近ネットで話題の、フルCG製オードリー・ヘプバーンによるチョコレートブランドのCMです。イギリスとアイルランドで放送されてるようですね。しかしまぁ本物が生き返ったかのようなスゴイ完成度。でもこのCMの素敵な所はソレだけじゃないんですね。
まず当たり前のことなんですが、ストーリーが素晴らしいです。
伝えようとしているベネフィットは最後のコピー「なぜシルクが手に入るのに木綿を手にしてるの?(Why have cotton when you can have silk)」ということで、ここでのシルクとはチョコレートの舌触りの事ですね。他のチョコでは得られない、きめ細やかでゴージャスな舌触りを訴求する事が目的なわけです。
そこから生まれたのがこのシチュエーション、『木綿=動かないバス』と『シルク=ショーファードリブンのオープンカー』の対比です。前半のオードリーがチョコを見るだけで食べないのは、『満員でしかも乗客がイライラしているようなバスの社内は、ゴージャスで舌触りの良いGalaxyを食べるシチュエーションとして相応しくない』と考えているからですね。そこにオープンカーの男性が現れ、彼女は『これなら良いシチュエーションになり得る』と思いつくわけです。
かたやオープンカーの男性はバスの中のオードリーを偶然見かけて、一瞬で恋に落ちてしまいます。でもオードリーが欲しているのは、突然現れたカッコいいプレイボーイ風イタリア男とのアバンチュールではなく、Galaxyに似合う、運転手付きオープンカーのお姫様専用席なんです。この二人の想いが全くすれ違う様は、基本的にコメディの形です。観客の「ワハハ」という音声が入っててもおかしくない。
でもそこに流れてくる曲は、オードリーヘップバーンが映画『ティファニーに朝食を』の中で歌った『ムーン・リバー』。作曲は僕も大好きなヘンリ・マンシーニ。恋が始まるようで絶対に始まらないミニコメディを上質なトーンで包み、「ワハハ」な空気感が起きないように抑えこんでいます。男性が恋に落ちる瞬間とオードリーが特等席を見つける、その同じ瞬間に音楽のブレイクを設けてるのが憎い演出ですね。(ミニコメディをクラシックな音楽で上質にまとめる演出手法は、日本でもけっこう見かけます)
全体のアートディレクションもいい。instergramのフィルターのような古いフィルムの質感と色合いが素敵です。
この広告について、オードリーの肖像権を管理している彼女の息子たちはこう言っているそうです。
「母は今回の仕事を誇りに思うでしょう。いつもチョコレートを愛してましたし、食べると元気が湧いてくるって言ってましたから」independentより
こんなPRネタまでちゃんと用意して、このCMの製作チーム、完璧すぎです。どこの代理店かわからないのですが、判明したら追記します。
アイデアカテゴリは、ラブストーリーかと思わせる部分の『裏切る』と、フルCGによる『あり得ない映像をリアルに作る』とします。よくわからん男のクルマに乗るほどGalaxyが好きという事で、『マニアになる』も加えておきましょうかね。
追記1;オードリーの息子達の話はindependentによる取材のようですね。
追記2:代理店はAMV BBDOでした。
追記3:CG製作はLONDONのFramestore。制作裏話はこちら。
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