TVC011: “Applause” by DDB Chicago for Anheuser-Busch
【CMストーリー】
ある日のアメリカの空港にて。
旅行客やビジネスマンが、それぞれの時間を過ごしている。
そこに現れた米軍の部隊。任務でどこかの国に向かうらしい。
制服を見る限りでは、どうやら行き先は砂漠方面のようで…
そして空港で起きた出来事とは。
【コピー】
感謝します、あなた達に。
アンホイザー・ブッシュ。
【CMアイデアカテゴリーと解説】
目撃する+実証する
さて、スーパーボウル2005からの海外CM第五弾は、これまたアンホイザー・ブッシュ(バドワイザーの会社)からの作品です。Ad Meter調査ではTVC006のバドライト、TVC009のアメリクェスト抵当会社に続いて、堂々の3位でした。
このCMについてはアイデアを検証することが難しいですね… でもこのCMが流れた後では、どこの空港でも軍隊が現れたら大なり小なり拍手が起きていると思います。(目撃する+実証する)企業の姿勢を見せるだけではなく、そういうムーブメントを起こすことが目的であるとすると… それ自体がこのCMのアイデアなのでしょう。その目的のためには、2億5千万かけてオンエアすることにも意味があったのだと思われます。
本当に伝えたかったメッセージは、「私達は、この国を愛する人々のためのビール会社です」ということでしょうか…しかしそんな事は一切語らず、コピーは「Thank you」のみ。それだけでメッセージが、いやらしくなく、真っ直ぐ、充分に伝わります。これまたすごくアタマのいいアプローチだと思います。贅肉ゼロの、引き締まった筋肉で作られたCMですね。
【恥ずかしながら最近気づいたこと】
最近あるブランドの作業をしていて、突然「ブランド広告」と「商品・キャンペーン広告」の物理的な違いに気づきました。それは「ブランド広告が発するメッセージは普遍的なものであるべきであり、かつ、メッセージ内に社名や商品名などがあってはならない」ということです。よく軽々しく、ふだんの仕事で「ブランド広告を作る」など言われてます。しかし、そのメッセージ内に社名などが入ってしまった途端に、それはブランド広告ではなく、ほとんど「商品・キャンペーン広告」になってしまうと思うのです。
このCMの場合で考えてみると、たとえば「Thank you」ではなく、
「アンホイザー・ブッシュは、すべての兵士にエールを送ります」
というコピーメッセージが最後に出たらどうなるでしょうか。これはもはやブランド広告ではなく、企業のためのキャンペーン広告ではないでしょうか。こうなると、視聴者から見てそのCMは企業の自慰行為にしか見えないでしょう。でも、この「メッセージ」と「企業・商品」の距離感がとても難しい。広告から企業・商品が一歩引くというか。ここがわからない間は、ブランド広告は語れも作れもしないのではないか。まぁそんな大事な事を38歳にもなって気づくわけですよ…(笑)
【アンホイザー・ブッシュのDNA】
ちょっと記憶が定かではないのですが、確か911の次の年のスーパーボウルのCMは、←の写真のようなバドワイザーのデリバリー用馬車をひいた馬たちが、WTCが無くなってしまったマンハッタンの方向を向いて膝をついて礼をするという内容でした。今回のTVC011はそのCMのDNAを受け継いでいるわけです。
【このCMを見た後に思わず考えてしまったこと】
なぜ日本では自衛隊のCMがないんでしょうかね。これだけ世界や災害などに貢献してきた自衛隊に
入隊しようキャンペーンがあってもいいかと思いますが。もちろん入隊は自由意志であるべきですね。
命を張って国を守ろうという人々が尊敬されないのはおかしいと思うのです…
日本人であることに誇りがあるならば、その誇りを誰かが守らなければいけないですよね。
とかいって全然右翼じゃないですよ! 戦争は起きない方がいいに決まってますし!
あぁ難しい問題になってしまった。うーむ。
では気を取り直してまた次回!
【まめ知識】この真面目なCMを作った監督、TVC006の監督と同じ人ですから!器用ですね!
“Applause”(30”)
client : Anheuser-Busch
agency : DDB Chicago
director: Joe Pytka
country :United States
year :2005