15日に開催されたガリ☆ナイトの前夜、マンダリンオリエンタル東京にあるタパス・モラキュラーバー(Tapas Molecular Bar- Tokyo, Japan)を初訪問し、誕生日を祝っていただきました。実験的センス・オブ・ワンダーに溢れた驚きの食体験を提供していただいたのは、今はなきエル・ブリで修行されたチーフ・キュリナリー・エンジニアの橋下さん。イントロからフィナーレまで2時間以上も続く劇場的な体験に、数年前の開店時からずっと訪問したかったボクは大興奮でした!
『モラキュラー キュイジーヌは、斬新な食の実験室のようなエンターテインメント。38階のシックな「オリエンタルラウンジ」内にあるスシバー スタイルのカウンターがシェフのステージです。』
上はタパス・モラキュラーバーサイトにある説明文ですが、『食の実験室』というコトバ、そして料理人としての肩書きを『エンジニア(いただいた名刺より)』と呼ぶトコロに、とてもシビれるものがあります。さて前置きはこれぐらいにして、驚きの料理達を順番にご紹介しましょう。お腹の用意は良いですか?
まず出迎えてくれるのは、くるくると回転しているお皿達。上にはスポイトと食材が乗ってます。あれ、よく見ると宙に浮いてますよ。
8人だけが座れるカウンターの前にガラスケースがあり、その中で皿が回転しています。どれも宙に浮いてます!
この黒い浮遊台にレンゲ形の皿が載ってるわけですね。下からLEDで照らされており、かなりシュールな雰囲気が漂ってきています。このディスプレイ台はスペイン製で、たいへん高価なものだとか。
振り返るとこんなに素晴らしい夜景が広がっているのですが、目の前の上演に集中します。
【スカイフォール/Skyfall】
まず出てきたのはスカイフォールと名付けられた食前酒。リキュール系のお酒が注がれたカクテルグラスに…
液体窒素が注がれます。冷気が溢れ、グラスを伝って下に降りていきます。まさにスカイフォール!
これが凍った表面。さすがのアルコールも液体窒素で瞬時に氷結!
これをスプーンで割って飲みます。色はともかく、イメージは007のマティーニ的。
ピストルの上にオリーブが乗っていました。このピストル台はレジンで手作りしたとか!その熱意に惚れました。今上映中の映画をテーマにコースがスタートするというのも、なかなか粋じゃないですか。
【クリスタルポテト/Crystal Potato】
次に出てきたのはポテトチップ。そう言われてもどれがポテトチップなんだか。右のですかやっぱり。
正解でした。透明のポテトチップスです。しかし口の中に入れると確かにポテチの味がします!左にあるオリーブオイルの泡をつけて食べます。
【海草/Seaweed】
これは3Dプリンタの出力か、ザハ・ハディドの建築模型か。答えは海草のフライです。軽いおかきのようなサクサクとした食感でした。でもどうやってこの複雑な形状が出来ているんだろう。わからない。パクパク。サクサク。
出ました!注射器の登場です。この中にある液体を押し出し、下の水槽に落としていくと…
【キャビア/Caviar】
キャビア状の玉が完成します。りんごとミント味のキャビア。中は液体。食感はイクラっぽい。
【鯛茶漬け/Tai Chazuke】
次に出てきたのは鯛茶漬け。って、どこがお茶漬けなのよという外観。ピンク色の玉には梅昆布茶が入ってます。中はちゃんと液体です。上に乗っているのはあられのような粒。鯛も昆布締めで、全部を一気に口にすると、鯛茶漬けの味がっ!美味!
【フォアグラとコーヒー】
突如コーヒーメーカーがセットされました。上のタンク内にあるのはポルチーニマッシュルームとコーヒー豆。下の液体は手羽先と比内鶏のコンソメを煮詰めたスープ。
出来上がったのはコーヒーの香り溢れる豊潤なスープ。濃い味がとても美味しい。上の泡がフォアグラだったかな?
泡はエスプーマで作っている濃厚なタイプと、普通の空気で泡だてている軽いタイプの2種がありました。こちらは軽い泡を製造中。ポンプは魚の水槽用のものを使用。
【タラバ蟹とグレープフルーツ/Spider Crab, Grapefruit】
茹でた蟹に、寒天状に加工されたグレープフルーツが乗っています。右の泡は確かシャルドネビネガーフォーム。
【黒トリュフ 百合根/Black Truffle, Lily Bulb】
スープというか、これも泡っぽかったですね。スープは飲むものではなく食べるものと言いますが、まさしくこれは食べるスープ!トリュフの香りが、ふがっ!
【イベリコの秘密/Secreto Iberico】
スモークマシンで香りづけされたイベリコ豚です。
ガラスの器を開けると魔法のように煙が上がり、燻製の香りが漂う中にイベリコ豚が現れます。柔らかい。旨すぎ。
イベリコ豚は、シャーベット状に凍らせたチーズの棒をあわせながら食します。
何やら卵の黄身のものが登場しました。それにしては薄い色。これは何でしょう。答は後ほど。
【ワイルド・ジューシー・ラム/Wild Jucy Lamb】
お肉の中にジューシーな肉汁が封入されています。ギャートルズの肉っぽい。一口で食べないと液体が飛び出すので注意!右の緑色の球体は桃ですね。
【森の焚き火/Forest Bonfire】
赤味噌と墨で黒色に調理した野菜達です。キャンプファイヤー気分でいただきます。
【味噌汁/Miso Soup】
先ほどの黄身状のものが出てきました。なんと味噌汁です!卵の黄身のように薄い膜で覆われていて、口の中に入れると皮が破れ、お味噌汁が広がります。白い玉は豆乳で作られた豆腐だったかな。ウマッ!
【白い吐息/White Breath】
液体窒素で凍らせたミント風味のメレンゲをパクっと食べると、鼻から白い息が吹き出します。その景色はどう見てもギャグで、カウンター周りで沢山の笑い声が弾けました!
【デザート達】
食の饗宴はそろそろ終盤、冬らしいデザート達の登場です。甘いエスプーマの山にローストしたナッツを振りかけ、その上にホワイトチョコの雪が積もっています。ウマー。
さらにデザート達が登場します!上のハンカチのような物体は、平面状に伸ばされたシナモン入り綿菓子です。中断の茶色はモンブラン。黄色はオリーブオイルのグミ。下段のピンク色はラズベリー味ホワイトチョコのシュワシュワソーダ味。茶色の棒はオレンジピールとパチパチするチョコ。口にしながら『これは冬の花火だなぁ』なんて思ってました。しかしなんですかこの特注台は!
【フルーツ/Fruits】
驚きは最後まで続きます。レモンとライムのスライスが並んでいますが、もちろん普通は酸っぱくて、フルーツとして食することはありません。しかし西アフリカ産のミラクルフルーツ(写真無し)を口にしてからレモンとライムを舐めると、汁が劇的に甘く変化するのです。これはホントにミラクルでした!しかもその成分はミラクリンと呼ぶとか。どんだけ!
シャンパンは12月12日のノーベル賞晩餐会で振舞われた『ジョセフ・ペリエ』をいただきました。
以上で終演です。タパスはスペイン語で小皿料理、モラキュラーは分子、合わせると『分子小皿料理』。これまでに味わったことのない、素晴らしい食体験。はるか遠くを、それも長期間、旅してきたような気持ちになりました。生きてて良かった!ちなみにメニューは3ヶ月に1回変わるそうで、定期的に通うお客さんもいらっしゃるとか。ボクもまた訪問したいと思います!一度に食を体験できるのは8名のみ、そして1日2回だけの上演。この稀有な体験を、皆さんも是非。
▼ボクも持っているこの本は、アルギン酸ナトリウムで作るキャビアの作り方や、ミラクリンの味わい方、液体窒素での調理法など『科学的料理』が満載です。タパス・モラキュラーバーのエンジニア(重ねて言いますが、このお店でのシェフの呼び名です)の皆さんもお持ちだとか。ご興味のある方は是非チェキラ!
オライリージャパン
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